簡易トイレの前の床に水たまりができていることに気が付いた。
母は便器の端に腰かけて小便をすることが多いので、そのパターンでおしっこが床に放出されたのだろうと思って掃除を開始した。
そうではなかった。簡易トイレの蓋の取っての凹みに尿がたまっていたのだ。つまり、蓋が閉まっている状態に腰を下ろして用を足したということ。
母が寝床から起きてきたので腹立ちまぎれに「床におしっこしないで!おしっこは便器の中にして!」と説教がましく言ってしまった。
怒っても何の解決にもならないと悟った俺は無言のままトイレの周辺をぞうきんで拭きまくった。
母は「デイサービスに行ってきて疲れていたから・・・・」と弁解しようとしたが「済んだことはもういい。大丈夫。問題ない。」と俺はその議論を強制終了させた。
レビー型認知症の場合、意識レベルが低いときにこんなことが起こる。意識がもうろうとしているときに最後の力を振り絞ってトイレに向かっているのだ。健常者の常識は通用しない。低血糖の人の意識混濁状態に近い状態が波のように押し寄せる。疲れているときにはなおのこと。
ちょっと匂いがしたので簡易トイレの蓋を閉めたままにしていた俺のミスということになるのだ。なにせ、相手は認知症だから責任能力はない。