今日の母の幻視はカエルだった。
母をカートで散歩させていると、母は小さな落ち葉を指さして「あっ、カエルだ」と言って立ち止まった。
「カエルなんかいる? それ落ち葉だろう。」と俺は訂正した。
次の瞬間、その落ち葉は風で吹き飛ばされた。
すると母は「・・・・」不思議そうな顔をして無言のままカートを押して歩きだした。
「幻視、幻視。カエルか。へえー。」と俺は面白がった。
母には虫とかウンチが見えることが多いが、鳥が見える時もあった。
カエルが見えたのは今日が初めてだ。
今のところ、幻視によって家族とトラブルになったことはない。
俺は母の幻視で腹を立てたことはなく、むしろ面白がって何が見えるのか話を聞くようにしてきた。
今日も笑った。母にだけ見えるものがあるということ、何故だか可笑しくて笑えるのだ。